ぼくはこの足でもう一度歩きたい

最近は再生医療の進歩がめざましく、少なくとも動物実験では切断した脊髄が再接着して、運動感覚機能を部分的には取り戻すことが証明されています。又、脊髄損傷の急性期の進行を最小限に留める方法も解明されつつあるようです。骨髄幹細胞やES細胞などで人間の脊髄再生がほぼ可能な段階にきていのは確かな様です。問題はいつ実用化されるか、又その技術の進歩がどの程度進むのか。

実際にもう急性期の特定の条件の脊損に実験的に行われている治療もあるようです。

脳梗塞後の脳細胞も再生可能という最新のニュースも聞き及んでいます。

 

ここで紹介する本は、世界初の脊損がFES(機能的電気刺激:Functional Electrical Stimulation)によって歩行出来た実例を被験者自ら記したものです。

作者が自分でプロトタイプと述べている様に、FESはまだまだ実験段階で多くの脊損患者をその障害から完全に解放するものではありません。

ただ、少なくとも受傷後かなりの時間が過ぎた脊髄損傷の人間が歩くことが可能、という証明にはなります。

 

僕が興味を持ったのは、受傷直後から退院までの著者の精神状態を記した前半部分。

 

正直、後半のFESに関する話しはあまり興味を持てませんでした。

現状でのFESと脊髄再生とには決定的な大きな違いがあります。

一方は運動機能の部分的回復をメカニカルテクノロジーで可能にします。

他方は、運動機能と感覚機能の両方の回復の可能性があります。

自分の足をしっかり感じて、自分の意志に従って動かすことが一番最高でしょう。

 

且つ、ラビション博士は「神経細胞の再生は不可能」(これには異議あり)「だから、FESが必要」とかなり強引です。

又、現状のFESは身体にかなりの負担(手術)が必要であり、コントロールにコンピューターを持ち運ぶことが必要です。

 

テクノロジーの進歩は予想以上に早い。5年前、完全に自立した2足歩行するロボットを車メーカーが作るなんて誰が想像したでしょうか?何年か後には劇的に進歩して体内に内蔵されたコンピューターで自由に脊損の人々が歩いているかもしれませんし、新しいテクノロジーが出現して廃れている技術になっているかもしれません。

 

一つの可能性として注意していきたいと思います。

 

ぼくはこの足でもう一度歩きたい

マルク・メルジェ/著 新潮社 ISBN4-10-542001-1 \1800

2002/08/31(Sat)作成

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