覚えてないということ

サワグチには事故の記憶が全くありません。

事故の瞬間ともう少し遡った時点からの記憶がすっぽり抜け落ちています。

事故現場までどうやって行ったのか道のりさえも記憶に残っていません。

気がついたら病院のベットの上で、手術後何日も経っていました。

こういうのを逆向健忘というのだそうです。

ちなみに、意識を取り戻してからの記憶が定かでないのを前向健忘というのだそうです。

サワグチにはやや前向健忘があると思います。記憶の混乱が一部ありますから。

事故から3年以上の月日が経ちますが、現在に至っても事故の記憶は欠片も戻って来てません。

夢に出てくることもなかったです。

僕の心の中では、事故に対する感情はゼロのままです。

ずっとニュートラルの状態なので、自分でもどういう風に捉えていいものか未だに判りません。

事故の相手の方からのお話と、警察などの調書から推察できる状況だけが、事故に関する唯一の知識なのです。

というわけで、事故そのものに対するトラウマ(心的外傷)は無いのです。

脊髄損傷になったことに対する精神的ダメージは勿論ありますが。

 

事故から2年程経って、事故の相手の方と直接お会いする機会がありました。

敢えて感情的な言い方をすれば、「僕をこんな身体にした張本人」なんですが、いかんせん記憶が全く無い為、「全然知らない人」といった戸惑いに近い感じしかなく、憎しみとか、怒りとかいった感情はなかったです。

 

脊髄損傷になった事実が現実として残りました。

 

事故後、私が入院中に、当時住んでいた部屋も、家族の手で引き払われました。見ることも叶わなかった新車の車も乗っていたバイク(ほとんど無傷だったそうな)も全て処分されました。大阪には僕の住んで居た痕跡はもう残っていません。

又、今、サワグチが住んでいる部屋には、事故当時使っていた家財道具は殆どありません。

あの時点で全てが振り出しに戻って、病院のベットからの新しい出発となったのでした。

 

僕が初めて1人で車で外出するとき、家族は複雑な気持ちだったんだろうなあと最近思ったりします。

 

2000/02/16(Wed)作成

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